2007年12月5日水曜日

「ちりとてちん」と「たんぽぽの花」

  初冬に咲いていた「たんぽぽの花」を見てNHK・TVの連続ドラマ「ちりとてちん(藤本有紀作)」の一場面を思う。
  先月末、約1か月半に亘る歯の治療を終え、ほっとして歯科医院駐車場に戻ったとき、車の後方にあるミカン畑に目が行った。数本の樹木に取り残された数個のミカンが縮こまったように実っていた。その手前の樹木の根元に鮮やかな黄色の花を咲かせている一輪の「たんぽぽ」の花に目がとまった。初冬に春の盛りを告げる「たんぽぽ」の花が咲くとは、暖冬なのだろうか。「たんぽぽ」は私の大好きな花なので、やはり目にとまるようだ。その辺り一帯に「たんぽぽ」の葉が、地面を這うように羽を広げていたが、この一輪以外に茎を伸ばしているものはなかった。
  この「たんぽぽ」を見て、「ちりとてちん」で毎回のように徒然亭草若師匠(渡瀬恒彦)が落語のなかで「たんぽぽの花盛り」と喋る部分が出てくるのを思い出した。この落語は、この師匠の十八番「愛宕山」で、「たんぽぽ」は、そのほんの一部分の語りのなかで出てくるだけだが、物語を知る上では重要な役割を持っている。
  「…御所からどんどん西へ出て、野辺へ出てまいりますと、春先のことで、空には、ひばりが、ぴーちくぱーちく、さえずって、下には蓮華、たんぽぽの花盛り、陽炎がこう燃え立ちまして、東山には霞の帯をひいたように…」 。
  「たんぽぽ」は、やはり春を象徴する草花の一つであるが、この物語には、もう一つこの師匠のなくなった最愛の妻(藤吉久美子)の面影とも重なっている。
  第40回で、この師匠の妻のことを、3番弟子の草々(青木崇高)が主人公和田喜代美(貫地谷しほり)に話す部分があった。
  「おかみさんは、お囃子さんやったんや。師匠の高座のはめものは、たいがいおかみさんがやってはった。不器用な人でなあ、家事も三味線も何をするにも一人前になるまで人の倍の時間かかってはった。たんぽぽの花が好きで、本人もたんぽぽみたいな人やったなあ。おかみさんがいてはるだけで、何や気持ちが明るうなった。そこだけいつも春の陽だまりみたいな、暖かいんや」。
  このドラマは、家族愛というテーマを喜怒哀楽を語る落語という世界のなかに押し込めて展開するところに見る人の心をひきつけてやまないものがあるのではないかと思う。私たちも「たんぽぽ」のような暖かい人になりたいですね。
 ☆画像は、早々役の青木崇高、http://sankei.jp.msn.com/entertainments/entertainers/080227/...からお借りしました。

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